コラム

「あの人がいい」客先から指名される人の秘密

初対面のときから、差がついている

掲載URL:https://president.jp/articles/-/27407

コラム プレジデントオンライン

仕事のとき、法人名(企業ブランド)で依頼される場合と、個人名(個人ブランド)で指名される場合に分かれる。誰もが知る企業であっても、「○○さんだから頼んでいる」「○○さんが担当でなければ嫌だ」と言われる場合には、担当者が「個人のブランド力」を発揮していると見ていい。世の中には「個人のブランド力」が非常に高い人がいる。魅力があるだけでなく、多くの顧客やファンが生まれる。なぜ、彼ら、彼女らは、人気があるのか――。

なぜ、顧客との会話が弾むのか

経営者や社員が「個人のブランド力」を発揮すれば、自ずと企業のブランド力も向上し、社会から高い評価を得ていく。「個人のブランド力」を高めるには、どうすればいいのか。そのプロセス追ってみる。

「個人のブランド力」向上はすべてのビジネスパーソンが目指すところだが、企業からも個人からも、評価をされなければいけないのが「経営者」だ。企業のブランド力がまだ発揮できていない中堅中小企業のオーナー経営者なら、なおさらだろう。とくに起業して日が浅い企業では、個人のブランド力を発揮できる経営者の存在が欠かせない。

(1)初対面の相手の情報を調べ、会話に生かす

初対面の人と会う場合、企業名と名前がわかっているなら、ネット検索して事前に相手の情報を入手しておこう。たとえば、このような観点だ。

・会社を代表してインタビューを受けた記事や動画が過去にないか
・面談する相手企業や所属する部門が手掛けている仕事の内容は、自社に関係していないか
・出身校が自分と同じだったり、ゼミやサークル活動で共通したりという点はないか
・ブログやFacebookなどをしていないか。もししていたら、どんな記事をアップしているのか

こうした情報を検索して、相手を理解していれば、初対面でも会話が弾み、先方は好意を抱いてくれやすい。

(2)自分がどんな専門性を備えているかを、アピールする

会社がどんな業務を行っているかを説明できるのはもちろんだが、自分がどんな専門性を発揮できるかを相手にアピールできれば、自身の存在価値はより膨らむ。たとえば、次のようなテーマは、とくに興味を引きやすい。

・企業向けのITサポートを数多く手掛け、取引先から信頼された実績をいくつも持っている
・過去の業務経験から、新たな販路を開拓するための有効な手立てを知っている
・採用で人が集まらない企業に、応募者を増やした実績があったり、人材獲得に成功した企業の事例に精通していたりする
・企業の固定費を減らす方法を知っている。
・ウェブサイトのアクセス数を増やす具体策を助言できる

本業に加えて、こうした具体的なノウハウや支援策が提示できる人なら、相手はこちらの話を聞いてくれ、大事にしてくれる。

ときには、弱みを見せる人間のほうが魅力的

(3)言葉遣いに配慮する

きちんと挨拶ができ、年長者に対して正しい敬語や言葉遣いができる人を、年長者や経営者は好む。長年、多様な人たちと出会い、多彩な経験を積んだ人たちは、将来活躍できる人材や目を掛けるべき人を嗅ぎ分ける力を持っていることが多い。実力者に気に入られる魅力(個人のブランド力)を備えていれば、取引先や人脈を紹介してもらうことにつながる。

(4)聖人君主でなく、遊び心を持つ

有名校を卒業し、一流と言われる企業に入社し、MBAを取得したからといって、個人ブランド力を高めることにはつながらない。その人は「学校のブランド力」「企業ブランド力」をアピールできても、個人の魅力が問われるブランド力とは無関係だ。

遊びもせずに、成績のよかった同級生が、社会に出てからその動向を聞かなくなることはよくある。いくら優秀でも面白みに欠け、真面目すぎる性格に、人は好意を寄せない。その一方、学生時代に勉強はほどほどだったが、どこか憎めない性格の人が社会で活躍するケースは多い。人としての個性と魅力を備えている人は、それだけ実社会でチャンスをつかむ機会が増える。

誰もが知る企業のナンバーツーだった人の実話だ。温和で信頼でき、愛妻家で実直そうなその人が、会食の席でこう話したそうだ。

「仕事で問題を抱え悩んでいるときに、まあなんというか、魔が差したというか、好きな女性ができてね……。悩みから逃げようと思ったら、悩みがもうひとつ増えちゃって」

愛妻家でも、そんなことが起こるのだと知り、人間的な一面を吐露してくれたことで、聞き手は以前より一層相手に親近感を抱いたという。ときには、弱みを見せる人のほうが好意を持たれやすい。

(5)人が求めていることに気付き、相手の役に立つ情報を発信する

FacebookやブログなどのSNSで、他人がどこで、何を食べようと、多くの人は関心を示さない。だが相手が求めている有益な情報だと、話は変ってくる。

・自身が読んで有益だったビジネス書の紹介とそのレビュー
・部下を連れて行くのに最適で、雰囲気がよく、料金も手ごろなレストランや飲食店などの情報
・取引先への手土産として喜ばれるお店の品物の紹介

など、ビジネスパーソンが求める情報や話題を提供している人には、必ずファンがつく。人気のあるブログを書いている人や、専門家として特定の分野で書籍を出している人などは、必ずこの力を発揮している。

いつ立場が逆転するか、わからない

(6)人を応援する

一般的なビジネスパーソンは、昇進祝いや昇格祝いには馳せ参じるが、転勤や転職のときになると様子を見るか、行かない人が多い。目先でしか付き合えない人は、仕事でもプライベートでも人的なつながりが希薄になる。個人的にブランド力を発揮している人は、多くの人が行かないこうしたタイミングでも足を運び、これからの関係を不動のものにする。人の心の不安や痛みを理解しているから、できる対応だ。

もし、悲しいことがあったときは、慰める言葉を掛けるのではなく、何も語らず共に時間を過ごす。定年を迎えた人のために、一席設けて慰労し、今後も付き合いを続ける。こんな対応をしてくれた人のことを、相手は忘れない。自分が窮したときに、最初に支援の手を差し出してくれるのは、こうした関係を築いた人たちだ。

(7)協力会社や飲食店のスタッフも味方につける

人はお金を払うときに、本性が出る。お金を払えばなんでも許されると、勘違いする人を見かける。だが個人のブランド力を発揮する人は、取引先はもとより、協力会社の担当者や宅配便の配送者、接待で利用する飲食店のスタッフなどにも心を配る。自分が困ったときに助けてもらうこともあれば、長い人生では立場が逆転する場合もあるからだ。人に対する礼儀を分け隔てなくできる人には、顧客とファンが生まれる。

面白いことに、周囲に人の目がないときにこそ、人間はその本性をさらけ出す。ところが、いつ誰に見られているかわからないというのもまた真実だ。普段の行動を思い起こし、以下のような態度を取っていないか、セルフチェックしたい。

・込み合う電車の中で足を組んで平気でいるビジネスパーソン
・採用面接を終えたあと、カフェで訪問先企業の批評をしている就職活動中の学生
・電車で席をひとつ動けば前に立つふたり連れが座れるのに、意に介さずスマートフォンに興じるビジネスウーマン
・商業施設にあるハンディキャップ用の駐車スペースに、高額車に乗って平気で駐車する経営者
・受付や総務の女性には横柄なのに、仕事をもらっている相手には媚を売る営業マン
・高齢者が地下鉄の駅で大きな荷物を持って階段を上がっていても、目に入らない人