マーケティングのジレンマ・・・No.84 ECが拡大しても、実際に足を運ぶ価値のあるリアルの店舗は強い
ECが台頭すると実店舗は没落するという一部メディアの報道に乗せられ、リアルの店舗のメリットや活用方法を見いだせないまま衰退していくアメリカの小売業が多かったことは事実です。ECで買い物が済ませられるアイテムはこれからも成長する一方で、実際に売場に足を運ぶ価値のあるリアルの店舗は今後もその役割を果たすようです。
独自性があり顧客に価値提案が行えているリアルの小売店は出店を続け、売上を堅調に伸ばしている
パンデミックによってアメリカはもとより日本でも多くの小売業が一時期休業を余儀なくされました。営業を再開してからも、生活者がリアルの小売業に買い物に出かけるようになるには時間が掛かりました。そんな中でニューヨーク・タイムズはアメリカのショッピングモールが復活しているという記事を2024年6月10日に掲載しています。
パンデミック後のアメリカで注目しておきたいのは、ショッピングモールでは二極化傾向が続いていることです。高級店のテナントが多いショッピングモールの業績は好調ですが、ローエンドのショッピングモールの多くは長く苦戦しています。
また閉店や倒産が集中しているのは「平凡な中流」から抜け出せないアメリカの小売店です。逆に独自性があり顧客に対して価値提案が行えている小売店は出店を続け、売上を堅調に伸ばしています。
ウォルマートやターゲット、ベストバイなどはコロナ禍以前から実店舗を資産と位置付け、投資を増やしてきました。複数の販路を有機的に連動させ、多様な選択肢から買い物を提供するための資産として、実店舗を位置付けたからです。
オンラインの売上を増やす上でも実店舗が果たす役割が重視されており、実際に拡大しています。オンラインの成長は実店舗の成長を上回っており、この傾向は今後も続くと予想されています。その一方で実店舗がオンライン需要を促していることも事実のようです。店舗からの直接発送、近距離配送、そしてオンラインで注文した商品を店舗で受け取るクリック&コレクトを利用する顧客の注文を受ける上でも、実店舗はその機能と役割を担っているからです。
実店舗は没落するという一部メディアの報道に乗せられ、リアルの店舗のメリットや活用方法を見いだせないまま衰退していくアメリカの小売業が多かったことは事実です。実店舗の役割は以前とは変わり、ECは今後も世界で台頭していくことは確かです。そんな中でECサイトの買い物で済ませることができるアイテムはこれからも成長する一方で、実際に足を運ぶ価値のあるリアルの店舗なら今後もその役割を果たすようです。