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マーケティングのジレンマ・・・・No.57  先進国で当たり前になっているインフラやサービスが入手できない国々は、大きな可能性を秘めたブルーオーシャンだ

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ブラジルでは15歳以上の人口の30%、コロンビアは55%、メキシコでは65%(2017年時点)の人たちが銀行口座を持っておらず、その数は3ヶ国の合計で1億3,400万人に及びます。この中間層以下の巨大マーケットに着目し、飛躍しているブラジルのデジタルバンクがあります。

銀行口座を持っていない中間層以下の巨大マーケットに着目し、飛躍しているブラジルのデジタルバンク「ヌーバンク」

ブラジルでは15歳以上の人口の30%、コロンビアは55%、メキシコでは65%(2017年時点)の人たちが銀行口座を持っておらず、その数は3ヶ国合計で1億3,400万人に及びます。この中間層以下の巨大マーケットに着目し、直近の3年間毎年2倍以上のペースで利用者が増えているのが、デジタルバンクのヌーバンクを傘下に持つヌーホールディングス(NU)です。

2013年にブラジルで創業した同社は、店舗を持たず100%オンラインで行う金融サービスグループ企業です。スマートフォンを使って簡単に口座が開設でき、その口座と紐づけたカードを発行。このカードはクレジットカードやデビットカードとしても利用でき、アプリを使って銀行への送金や水道・電話料金への支払いも可能です。さらに生命保険からクレジットカードローン、零細企業向け貸し出しといった金融サービスを行う総合デジタル金融サービス企業として、4,800万人のユーザーを擁しています。

創業者のダビド・べレスは1982年にコロンビアで生まれ、アメリカのスタンフォード大学を卒業後、モルガン・スタンレー、セコイア・キャピタルなどに勤務後、2013年にコンサルタントのクリスティーナ・ジュンケイラ、ソフトウェアエンジニアのエドワード・ウィブルの2人の共同創業者とともにサンパウロでヌーバンクを設立しました。

ダビド・ベレスが、セコイア・キャピタルのパートナーとしてサンパウロに赴任していた2012年当時、ブラジルではブラデスコ銀行を始めとする5大銀行が市場の8割を占め、高額な手数料でありながら十分な金融サービスを提供せず、しかも新たなテクノロジーに無関心なブラジルの大手銀行は、それでも巨額の利益を得ていました。そこでダビド・ベレスたちは、ブラジルの大手銀行の市場に新たなテクノロジーを携えて参入します。

当時のブラジルは経済危機に襲われ、既存の銀行は窮地に陥いっていました。その間にヌーバンクは成長を遂げ、新型コロナウイルスの影響で利用者はさらに拡大。ロックダウンに見舞われる中でも、成長を続けていきました。ヌーバンクを傘下に持つヌーホールディングス(NU)が、2021年12月9日にニューヨーク証券取引所に新規上場(IPO)し、現在時価総額は6兆円を超えています。同社の株主としてウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイが約500億円を出資しています。

有線電話や十分な医療インフラがない発展途上国が、スマートフォンやドローンといった最先端技術をいち早く導入し、短期間に新たな社会基盤を構築しつつあります。先進国では当たり前になっているインフラやサービスが入手できない国々は、これからの成長市場として大きな可能性を秘めた、まさにブルーオーシャンです。

参考資料:
●ブラジル発の超注目フィンテックNubank「南米で人気のデジタルバンク」MA STAND 2019年8月27日
●ブラジルの新進フィンテックNubankが2.6兆円の評価額で420億円調達 TechCrunch Japan 2021年1月31日
●設立8年で顧客数世界一に。南米発デジタル銀行が起こした「革命」フォーブス ビジネス 2021年8月17日
●ブラジルのデジタル銀行Nubankが上場、時価総額5兆7000億円に フォーブス ビジネス 2021年12月10日