コラム

マーケティングのジレンマ・・・・No.18 競争相手は、同業他社という時代ではなくなった

掲載URL:https://www.linkedin.com/pulse/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9Eno18%E7%AB%B6%E4%BA%89%E7%9B%B8%E6%89%8B%E3%81%AF%E5%90%8C%E6%A5%AD%E4%BB%96%E7%A4%BE%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F-mitsuo-sakai-%E9%85%92%E4%BA%95%E5%85%89%E9%9B%84/

コラム リンクトイン

企業が同業他社と競争している時は、どんなに追い込まれようと、打つ手はあります。しかし競争相手が時代になった時、時代を相手にして競うのは容易ではありません。

企業にとって最も脅威となる存在、それは時代です。

20世紀に成長したメーカーと小売業は、製造と販売の役割分担を行って効率よくビジネスを行う業界の仕組みが出来上がり、そこでは改良改善に代表される「市場対応型マーケティング」が機能した。競合する小売業もメーカーもみな業界の慣行を前提にビジネスを行なってきた。デパートとアパレル業界はその典型だ。だがそこに新たな業態が現れる。紳士スーツなら「洋服の青山」「Aoki」、カジュアルウエアなら「ユニクロ」「しまむら」といった勢力だ。デパートは彼らによって自社の商品カテゴリーを徐々に奪われていく。

その一方、安さを売りにするイトーヨーカ堂やイオンといった量販店を販路にするクロスプラス、小泉グループ、タキヒヨー、万兵、ヒロタ、サンラリーグループといったメーカーが成長していく。1990年代に入ると、JRが経営する駅ビル(例えばアトレ)やターミナル駅の周辺に専門店が生まれ、「BEAMS」「SHIPS」「UNITED ARROWS」というセレクトショップが台頭する。

2000年代からメーカーは製造だけでなく自ら販売も行うSPA(Specialty store retailer of Private label Apparelの頭文字をとったもので、アメリカのGAPが始めたアパレルの製造小売業態)という仕組みと共ZARA、H&Mなどが登場し、勢いを増すユニクロと共に台頭していく。SPAの強みは、問屋や卸、そして小売業などを仲介していないため自社の粗利益が高く、良質な商品を安価に販売しても利益が出る点だ。

こうした経緯の中で、デパートの売上高は1991年の9兆7,130億円をピークに右肩下がりを続け、2018年は5兆8,870億円にまで縮小する。そして今、デパートや量販店から顧客を奪いシェアを広げてきた紳士服チェーンも、2019年度決算では4社すべてが(青山商事・AOKIホールディングス・コナカ・はるやまホールディングス)赤字に転落した。総務省の家計調査を見ると、1世帯当たりのスーツへの年間支出額は91年に1.9万円だったものが、2000年には1万円に減少し、17年は5217円にまで減り、ピークの4分の1に縮小していた。

デパートとそこを販路にしていたアパレルメーカー、さらに紳士服チェーンは、競合と競う時代を経て、カジュアルシフトという波に翻弄される時代のただ中にいる。