マーケティングのジレンマ・・・No.96 単身世帯が消費市場の主役になる未来
日本は未婚化や晩婚化、核家族化の進行、そして高齢化によって単身世帯の割合が急速に増加しています。これまで消費を支えてきた40~50代の家族世帯が減少し、世帯人数の少ない高齢単身世帯が増えれば、消費の拡大は望めなくなります。そこで日本にはどのようなマーケティングが必要になってくるでしょうか。
人口動態と消費構造の変化に対応するには、単身世帯、特に高齢世帯の実態に即した商品やサービスの開発と提供が不可欠になる
日本では単身世帯の割合が急速に増加しています。1990年には全世帯の23.1%だった単身世帯は、2020年には38.0%、そして2050年には44.3%に達すると予測されています。この背景には、未婚化や晩婚化、核家族化の進行、そして高齢化が影響しています。特に注目すべきは、かつては若年男性が中心だった単身世帯の構成が大きく変化している点です。現在は60歳以上の高齢女性や壮年男性が多くを占め、2040年には単身世帯のうち60歳以上が半数を超えると予測されています。
こうした世帯構造の変化は、日本の家計消費に大きな影響を与えます。現在、単身世帯の家計消費は全体の3割弱ですが、2040年頃には3割を超えると推計されています。また、60歳以上の高齢世帯(単身・二人以上を含む)の消費は、現在は4割未満ですが、2050年には約半数に達する見込みです。
さらに家計消費全体で見ると、2025年をピークに減少へと転じ、2050年にはピーク時から約15%減少すると推定されています。これまで消費を支えてきた40~50代の家族世帯が減少する一方、世帯人数の少ない高齢単身世帯が増えることで、消費拡大効果は限定的になると考えられるからです。
こうした人口動態と消費構造の変化に対応するには、単身世帯、特に高齢世帯の実態に即した商品やサービスの開発と提供が不可欠になります。単身世帯と一括りにするのではなく、性別や年代ごとのニーズに丁寧に対応するマーケティングが今後の消費市場ではますます重要になってきます。
参考:増え行く単身世帯と家計消費への影響-世帯構造変化に基づく2050年までの家計消費の推計 ニッセイ基礎研究所