マーケティングのジレンマ・・・No.97 世界で進む「富の移転」 UAEとアメリカに富裕層が集まり、英国と中国からは流出
富裕層にアラブ首長国連邦(UAE)に人気が集まる理由は、「所得税ゼロ」「高度な社会基盤」「政治的安定」「投資家に有利な規制環境」といった優遇策があり、さらに2019年に導入された「ゴールデンビザ」制度の存在も指摘されています。「富の移転」競争は、単なる人材獲得にとどまらず、経済的影響力の再構築をかけた国家間の静かな戦いになっています。
「富の移転」競争は、経済的影響力の再構築をかけた国家間の静かな戦い
現在、世界では近代史上最大規模の民間資本の移転が起きており、多くの富裕層がアラブ首長国連邦(UAE)やアメリカを新たな居住先として選ぶ一方で、イギリスや中国からの流出が顕著になっています。
イギリスのコンサル企業ヘンリー&パートナーズの調査によると、今年は過去最多となる14万2,000人の富裕層が、外国で居住権や市民権を取得するとされ、2026年には16万5,000人に達する見込みです。ちなみに富裕層の定義は、投資可能資産が100万ドル(約1億4,500万円)以上とされています。
富裕層に最も人気があるのはUAEで、今年中に9,800人が同国に移住すると予測されています。背景には「所得税ゼロ」「高度な社会基盤」「政治的安定」「投資家に有利な規制環境」などがあり、2019年に導入された「ゴールデンビザ」制度(長期滞在ビザ制度で、特定の条件を満たす外国人に対して、5年から10年の滞在許可を与えるもので、スポンサーなしでUAEに居住・就労・就学できる点が大きな特徴です)の影響も大きいようです。
一方でイギリスは、1万6,500人の富裕層が国外で居住権を取得する見込みで、記録上最大の流出となります。中国からも7,800人が流出すると予測されています。ただし、実際に物理的に移住しているわけではなく、「万が一に備えた選択肢」として書類上の居住権を得ているだけという指摘もあります。
また、アメリカも7,500人の富裕層を新たに受け入れる見通しです。主にEB-5投資家ビザによるもので、外国直接投資や雇用創出に貢献しています。さらに、トランプ大統領とハワード・ラトニック商務長官は、500万ドル(約7億2300万円)で永住権を取得できる「トランプ・ゴールドカード」構想を打ち出しました。
しかしその実現性や富裕層の本格的な関心には慎重な見方もあります。
この「富の移転」競争は、単なる人材獲得にとどまらず、経済的影響力の再構築をかけた国家間の静かな戦いともいえます。
参考:世界で進む「富の移転」 富裕層に一番人気はUAE、流出著しいのは英国と中国 Forbes JAPAN