コラム

人手不足の会社が“最初に”考えるべきこと

社長の動き次第で変革の大チャンス

掲載URL:http://president.jp/articles/-/23465

コラム プレジデントオンライン
社長の参謀ブログ

世界でも類を見ない勢いでの人口減少に見舞われている日本。少子高齢化を背景とした生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の減少から、構造的な働き手の不足が続いています。大々的な採用活動ができない中・小規模の企業は、一層立場に置かれるでしょう。ただ、打開策がないわけではありません。当ブログのアドバイザーでマーケティングコンサルタントの酒井光雄氏が2回にわたり、規模は小さくても優秀な社員を獲得している会社の秘密を明かします。(全2回、前編)

人手不足は、今に始まった話ではない

企業のおよそ9割の数を占める中小企業で、その74%が「人手不足」を感じ、34%が売り上げの減少、30%が商品・サービスの質の低下といった影響が出ており、人手不足が経営の重荷になっていることが、中小企業基盤整備機構の調査で明らかになった(2017年3月に中小企業基盤整備機構が実施した「人手不足に関する中小企業への影響と対応状況」に関する中小企業アンケート調査)。

知名度の乏しい中小企業や新興企業にとって、人手不足は今に始まったことではなく、以前から経営者の悩みは「1に人材、2に人材、3、4がなくて5に人材」と言われてきた。

中小企業庁の「中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会」が提言する「人材を獲得するために必要な社内体制の整備」には、社内体制の整備について、有益な指摘があったので、ここにまとめておきたい。

人手不足こそ、変革・成長のチャンスと考える

中小企業の人手不足が深刻な状況になっていることを受けて、中小企業庁は「中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会による~中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン」を発表した(2017年3月、中小企業庁経営支援課)。その有益な指摘は、「3つの基本的な考え方」から始まっている。

▼基本的考え方、その1

経営課題として深刻化する人手不足を変革・成長のための機会と捉え直し、経営者次第で企業の変革が進む可能性がある。

人材確保できている企業は採用、職場環境、賃金、福利厚生、教育、人事に意識が高い。

離職原因は、上司との人間関係や業務内容、賃金、職場環境にあり、労務管理や意思疎通、人事管理などの職場環境整備は人材確保・離職防止において重要。

▼基本的な考え方、その2

募集する対象者を「女性」「高齢者」「外国人」にまで広げ、さらに働き手の立場に立った職場環境の整備を進め、人材を獲得する。

▼基本的な考え方、その3

ITの導入や設備導入、人材育成により、労働生産性を向上する。

次に、実際に人材を獲得するために取り組む際の「3つのステップ」が示されている。

 

▼採用前のステップ1

自社の「背後にある経営課題」や「補充したい業務」を見つめ直す。

 

▼採用前のステップ2

「業務の生産性」と「業務に対する求人像」を見つめ直す。

 

▼採用前のステップ3

女性、高齢者、外国人など対象となる働き手の目線で、「人材募集」や「自社PR」「職場環境」を見直す。

 

実際の採用活動で、あなたの会社に必要な視点

「基本的な3つの考え方」「人材獲得の際の3ステップ」に続き、求める人材が果たす役割と雇用する人材の数から見た、具体的な策(=視点)が大きく4つ示されている。

1、現状のビジネスを「維持」するために、「大人数」の人手が必要な企業の場合

採用する対象者を拡げる=新卒男性だけではなく、女性・中途採用・高齢者・外国人を視野に入れる。

業界イメージや先入観を塗り変える=ハードな業務で男性向きと思われたり、3K業界だと思われたりするイメージや先入観を変える取組みを行う。

就業時間を弾力的にする=早朝勤務の就業時間を設けて、高齢者に絞り込んで募集する。

2、現状のビジネスを「維持」するために、「小人数」の人手が必要な企業の場合

制約のある社員も公正に評価する=子育て中の女性や高齢者など制約がある人材も公正に評価する。

離職率を抑えて定着率を高める施策を実行する=正社員に限定せず、社員の都合(出産・子育て・介護など)に合わせて最適な雇用形態を用意する。また託児所を導入し、定年を延長するなど社員の定着率を向上させる。

教育制度を充実させる=社員の能力向上を図るために、教育制度を充実させる。

3、新たなビジネスを「創造」するために、「大人数」の人手が必要な企業の場合

生産体制や業務の見直しを図る=省力化する機器を導入しながら、勤務時間を短縮し、高齢者やハンディキャップのある人を採用する。

生産設備の導入やITの活用=ルーチンワークは機械に任せ、人は知的労働を行なう。

4、新たなビジネスを「創造」するために、「小人数」の人手が必要な企業の場合

海外展開を視野に入れた外国人の人材採用=大学と連携して、留学生の人材採用やインターンシップを行う。

従来の働き方に固執せず、柔軟な勤務制度の導入=育児や介護が必要な人には短時間労働でも就労が可能になる準社員制度、勤務時間の選択制度、在宅勤務など柔軟な制度を設けて導入する。

有能な人材の紹介を受けられる社内体制づくり=有能な人材を受け入れられる社内体制をつくりながら、大学の研究室や教授、専門家との連携を強め、学生や社会人の紹介を受ける。

などなど、雇用する企業側の「意識改革」や「社内体制の整備」を中心に、具体的な内容が指摘されている。

 

だが、社内体制を整備するだけでは、求める人材は集まっては来ない。入社したいと思う企業には他社にない「魅力」(ブランド資源)と、ネット検索した際に「豊富な報道事例」が見つかることが必須条件になるからだ。(後編に続く)