コラム

会社が絶対手放さない優秀な人材とは?

仕事に取組む基本スタンスが、普通の人とはまるで違う

掲載URL:http://president.jp/articles/-/25465

コラム プレジデントオンライン

仕事ではプロフェッショナルの域に達し、時には他社にスカウトされながらも、活躍するスペシャリストがいる。一方で、際立ったスキルを持ってはいないが、どんな会社でも通用し、必要とされる優秀な人材もいる。経営者や経営幹部が「絶対に手放してはいけない」と考える、優秀な人材の共通点を探ると、6つの条件が浮かび上がった。

AIがどれだけ進化しても、必要とされる能力

なるべく給与(時給)の高い企業を選んで働き、労務を提供する代償としてお金をもらうものだと考える人がいる。こういう人は、もらうお金以上の仕事はしない。一方、企業は人間がする必要のない作業は、費用対効果が高く効率のよい方法に切り替えていく。作業に就いている人たちが賃上げを要求すればするだけ、企業は効率がよく、コストを抑えて代替できる「人を使わない方法」を考えて導入していく。

かつて多くの労働者が働いていた自動車や電機産業では、かなり以前から工場の自動化が進み、そこに働く人の数は大幅に減少した。近年、この流れは他産業にも急速に広がり、先陣を切っているのが食品・医薬品・化粧品だ。こうした業界では大量生産だけでなく少量多品種にも対応できる自動製造ラインと無人搬送車などを活用したFA(ファクトリーオートメーション)、そしてロボットの活用により「省人化」を実現している。

日本に限らず、人件費が高騰する中国などのアジアや、ドイツをはじめとするヨーロッパなどの企業で、自動化への取り組みが世界で同時進行している。いかに技術が進歩しAIやロボットが人間の仕事に代替されても、企業が欲しい人材、手放したくない人材は必ず存在し、代替されることはない。

その共通点は、「企業に利益をもたらし」、その「利益を見える化できる」人だ。6つのタイプにわけて、くわしく紹介しよう。

どの会社でも求められる優秀な6タイプ

(1)いつでも上司の代わりができるよう、自身のスキルを磨いている人

上司が選べないからといって、上司の不満や非難をしているだけでは周囲からの評価は下がり、自身の進歩もない。「そんな暇があるなら」と、上司の立場に自分がなった(昇進した)際に、部下から信頼され、上司以上に仕事ができる人材になれるよう、仕事に取り組む人だ。

(2)企業に収益をもたらす人

決められたことを決められたように遂行する業務(作業)は、ロボットやAIの方が向いている。人間と違い、間違えることがないからだ。こうした業務(作業)はマニュアル化できるので、誰にでもできることが多い。だから代替されてしまう。

その一方、新しい価値を生み出して、企業に利益をもたらす仕事(時給換算でない仕事)ができる人を、会社は絶対に手放さず、他社に流出しないよう厚遇する。

営業部門の人材は結果が数字に出るので、報酬は成果に連動することが多い。成果が数字を通じて「見える」からだ。内勤業務の人も自分の仕事の成果を数字で見えるようにすれば、それなりの評価と処遇が受けられる。

たとえば、

・企業に収益をもたらす人材を採用できる仕組みを考え出し、その仕組みを運用できる人事担当者

・ヒット商品を生み出し、同時にロングセラー商品の価値を磨き上げて、さらに売上げを伸ばせるマーケティング担当者

・人を使わず商品やサービスをECで販売し、顧客のデータベースをつくりながら継続購入に結びつける新規チャネルをつくって運用できるシステム担当者

・会社の隠れた無駄を見つけ、そこで浮いた費用を投資に回して運用し、利益を生み出せる経理や財務の担当者

・新たな調達システムを考え出し、痛みを伴わずに経費を削減する仕組みを運用できる調達担当者

・広告や広報の効果を最大限発揮できる仕事ができ、有能な人材を入社希望者にできる広告・広報担当者

・社員のメンタルストレスを軽減し、働きやすい職場を実現することで、社会保険料の支払い額を軽減する総務担当者

といった仕事ができる人なら、成果を数字で見える化できるので、会社が手放せない人材になれる。

 

(3)人材(部下)を育成できる人

有能な人は一人で何でもできることが多く、仕事が自己完結して、部下が育たないことが多い。部下を持つようになったら、自分で容易にできる仕事は部下に任せ、自分はより高度な仕事に取り組むようにする。部下に仕事を放り投げるのでなく、部下の成長と自己実現に繋がるように支援できる人は価値が高い。

有能な人材ほど、自分よりも有能な人材を集めて仕事に取り組む。自分が直接仕事に取り組まず、最適な人材に任せて結果を出してもらうために支援する立場に立てる人も、リーダーとして替えがきかない人材だ。

(4)5年先、10年先の社会構造変化を踏まえて、自分の仕事を高度化できる人

これからビジネスに大きな影響を及ぼす社会構造変化を踏まえ、先手を打って仕事に取り組み、自身の能力を高めていける人なら、その人の仕事は陳腐化しない。

将来確実に起きる社会構造変化として踏まえておきたいのは、

・AI(人口知能)により、人の仕事(労働人口の約49%)が代替される未来

・自動運転車の普及に伴う社会インフラと社会システムの変化

・ITのさらなる進化と普及

・マスメディアの衰退とSNSなどネットメディアの台頭

・フィンテック(金融市場のIT)の台頭

・シェアリング社会の到来(所有から利用へ)

・製造業(特に自動車産業)のサービス産業化

・キャッシュレス化による省力化(省人化)

・先進医療と先端医療による人間の超寿命化

など、ビジネスパーソンにとって必須の社会環境変化について絶えず情報を入手し、将来の変化に備えて自分の仕事を高度化させていける人材なら、経営者は厚遇する。

(5)営業経験を持ったプロフェッショナルの人

第一線で営業活動をしたことのない専門職は意外に多い。営業経験のない広告販促担当者やコピーライター、マーケティング担当者、サイト制作者、映像制作者、そして管理部門の人たちだ。

こうした人たちは新規顧客を開拓し、既存顧客との関係を深める取り組み、店頭などの現場で商品やサービスを実際に販売した経験がないため、営業センスを皮膚感として備えていない。そのため理論上は上手くいくように見えても、いざ実施してみると成果を上げられないことが起こる。先人が考えた理論やノウハウを学んでも、顧客心理を理解できない人から顧客は購入してくれないし、大事にもされない。

実際に顧客と接し、販売について「皮膚感」を備えている専門職なら、商いの本質を理解しており、顧客の心情と行動を踏まえた実効性のある取り組みを生みだせる。これはリアルの世界だけでなく、バーチャルにも共通する皮膚感だ。

 

(6)出来上がった企業ブランドに依存せず、逃げない人

就職する際に、「企業規模が大きい」「知名度がある」「業績がいい」「安定している」「給与が高い」「待遇がいい」「潰れない」といった基準で企業に入社した人材は、先人がつくった企業の付加価値やブランド資源に依存する作業に従事するため、新たな価値を自ら生み出す仕事に取り組む意欲が希薄だ。「会社の看板」や「名刺の力」に依存する人は、企業の業績が悪くなり待遇が下がると、すぐに転職しようとする。

反対にデキル人材は、日ごろから自社のブランド力向上につながる仕事に取り組み、業績が芳しくなければ、自分の力で何とか経営を上向かせようとあらゆる手を尽くす。指示される前に動ける人材だ。

 

「将来にそなえる」という視点を持つ人

今、都市銀行では大規模な人員削減が行われ、店舗の統廃合はもとより、ATM端末を相互開放する実証実験まで視野に入れ、自行端末を撤去してコンビニエンスストアのATMで代替するなど自前主義から脱却する動きが加速している。また最大手のビジネス機器メーカーでは40歳以上の社員1500人を早期退職させる取り組みを実施中だ。

40代以上のホワイトカラーこそ、AIやロボットに代替されないスキルを絶えず磨き、将来に備えて仕事に取り組むべきだ。それが現役時代はもとより、定年後の再就職時にも仕事の選択肢を広げることにもなる。