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価値のジレンマ・・・・No.12 「資格」に頼らず、生きていける力を磨く

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「資格さえ取れば仕事は来る」「資格さえあれば、何もしなくても顧客はやって来てくれる」時代ではなくなり、高額収入が確保される、安定した職業とはいえなくなります。ではどうすればいいでしょうか。

専門職も専門性に加えて他者にない独自のスキルを掛け合わせることが、今後不可欠になる

職業の需要がどう動いているかを知ろうと調べてみたら、厚労省の『※賃金構造基本統計』を基に129の職業の年収を2010年と2019年について比較するデータ(教育社会学者の舞田敏彦さんによる算出)がありました。(※10人以上の事業所に勤める一般労働者の月収、年間賞与額を129の職業別に知ることができる)

比較した10年間で、「年収の減少率が最も大きい3つの職業」は、公認会計士、社会保険労務士、弁護士という「士業」でした。

公認会計士・税理士は、2010年に841万円が、2019年は684万円(増加率0.81)

社会保険労務士は、2010年に760万円が、2019年は486万円(増加率0.64)

弁護士は、2010年に1271万円が、2019年は729万円(増加率0.57)

となっています。(いずれも月収×12+年間賞与)

弁護士が収入減になった背景には、弁護士の数が増え、東京など大都市圏に弁護士が集中し競争が激化していることがあるようです。

これとは別に、もうひとつ気になる動きがあります。それは病院経営と医師の収入の問題です。

政府は社会保障費に関して2040年までの見通しを公表しており、2018年度に39.2兆円だった医療費は、2040年度には最大68.5兆円(1.7倍)に増大すると推計しています(厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」)。その一方、保険料を負担する現役世代は約6500万人から約5600万人へと約15%も減少する見込みで、国が医療費の削減を急ぐ理由はここにあります。医療費の削減は、医師の収入減に直結します。厚生労働省が「外来医師多数区域」を公開するほど、開業医は供給過多になっています。

病院経営と医師の収入へのさらなる懸念は、AI技術の台頭です。

メドピア(医師専用のコミュニティサイトを運営する企業)の調査によると、42.6%の医師が「今後医師の需要は減少する」と回答しています(有効回答数3319)。

その理由は「少子化」「出産の減少」などに加えて、「AI技術の導入」です。「治療薬の進歩」「手術領域などへのロボットの導入」などがあり、厚生労働省は「2033年には医師は余剰状態になる」と推計しています。

診療報酬に依存している現状では、医師は現在の収入を維持できなくなる可能性があります。

「診断領域にAIが起用されると、診断や治療はある程度AIやロボットなどの先端技術の助けを借り、これからの医師は患者に寄り添うコンサルティング的なサービスに力を注ぐことになる」という指摘もあります。

難関の国家資格を取得したからといって、「資格さえ取れば仕事は来る」「資格さえあれば、何もしなくても顧客はやって来てくれる」時代ではなくなり、高額収入が確保される、安定した職業とはいえなくなります。専門職といえども、専門性に加えて他者にない独自のスキルを掛け合わせることが、今後不可欠になってきます。