価値のジレンマ・・・No.104 アメリカの超高級ホテル需要は、富裕層が牽引
アメリカの一般消費は弱さが続く一方で、富裕層の旅行支出は「体験価値」へシフトし、超高級ホテル市場を拡大させるという二極化が進んでいます。超高級ホテルはニューヨークで1泊平均1,560ドル、フランスでは2,600ドル超という驚くべきレートに達しています。
富裕層の消費行動は、高級車や時計などの「モノ消費」から、旅行やビラ・ヨットを求める「体験投資」へとシフトしている
アメリカでは所得の二極化が進む一方で、超高級ホテル市場が過去最高の好況を迎えています。景気減速や外国人観光客の減少といった逆風があるにもかかわらず、富裕層の旅行支出が市場全体を強力に押し上げているからです。
調査会社コスタによれば、今年のアメリカのラグジュアリーホテルの平均1泊料金は394ドルと過去最高を記録し、超高級ホテルではニューヨークで平均1,560ドル、フランスでは2,600ドル超という水準に達しています。1〜9月の高級ホテルの予約率は前年より2.5%上昇した一方、中低価格帯ホテルは微減にとどまりました。
背景には、富裕層の消費行動の変化があります。高級車や時計といった「モノ消費」から、家族と過ごす旅行や別荘級のビラ・ヨットを求める「体験投資」へとシフトしているためです。旅行サービス企業インターノバのアルバート・エレラ副社長は「超高級施設こそが業界を支えている」と語っています。
需要の急増を受け、ホテル各社は供給拡大を急いでいます。モンタージュ・インターナショナルは現在15施設を運営していますが、今後3〜5年で倍増を計画しています。また、コリンシア・グループはニューヨークのサリーホテルを再開し、週末1泊2,000ドル超で全室にバトラーが付き、レストランもメンバー限定という徹底した“超高級”戦略を展開しています。「到着15秒以内にドアを開ける対応」「呼び出し音が3回以内に応答」「宿泊客の名前を記憶する」など、従業員への細やかなオペレーション教育が特徴です。
一方で、アメリカの消費者心理は悪化しています。ミシガン大学の消費者態度指数は11月に50.3まで低下し、2022年6月以来の低水準となりました。連邦政府のシャットダウンの長期化が、不安心理を強めたとみられています。一般消費の弱さが続く一方、富裕層の旅行支出は「体験価値」へシフトし、超高級ホテル市場を拡大させています。