価値のジレンマ・・・No.111 「旧態依然とした習慣」がいまだに存在する組織で生じる摩擦とその正体
これからの組織に必要なのは、「従来の組織慣行について、ミドルエイジと若者世代とでどちらの行動が正しいか」という議論ではありません。必要なのは、その行動に意味があるのかという問いです。意味が共有されている組織では、世代間の違いは「対立」ではなく、多様性として機能するようになります。
問うべきは「正しさ」ではなく「意味」
Z世代(1996年〜2012年頃に生まれた世代で、2026年現在10代〜20代の若者層を指す。生まれた時からインターネットやスマホがあるデジタルネイティブ)が違和感を抱いているのは、単なる「慣習」そのものではありません。本質は、「なぜそれをやるのかが説明されていないこと」にあります。
例えば、
・上司が帰るまで帰れない
・形式的な謝罪や定型文(面識がなくても「お世話になっております」と書くメールなど)
・ハンコ文化
・定時後でも電話やチャットで仕事の指示が来る
・休日の社員旅行や社内イベントの開催
これらは、かつては組織秩序や信頼維持のために機能していました。しかし現在では、目的が見えないまま形式だけが残っている状態になっているケースがあります。問題は、「古いか新しいか」ではなく、意味が共有されているかどうかにあります。
●世代間対立ではなく「構造の問題」と捉える
重要なのは、「若い世代が悪いのか」「上司が悪いのか」という対立ではありません。
世代間のズレは、
・経験
・責任範囲
・評価される基準
の違いから必ず生まれるものです。したがって、企業が向き合うべきは価値観の違いではなく、組織の設計の問題です。
●企業・組織が取るべき5つの対策
1.「慣習の棚卸し」を行う
まず行うべきは、既存の習慣の見直しです。以下の3つで分類すると整理しやすくなります。
・価値があり残すべきもの
・形を変えれば活きるもの
・廃止すべきもの
ポイントは、「説明できるかどうか」で判断することです。説明できない慣習は、すでに機能していない可能性が高いといえます。
2.「なぜの共有」を組織の基本動作にする
命令ではなく、理由を共有することが重要です。
例えば、
「顧客対応は迅速に」ではなく
「顧客満足と信頼維持のために迅速な対応が必要」と伝えます。
この違いだけで、納得 → 主体的行動へと変わります。
3.「個」でマネジメントする
Z世代という括りで理解しようとすると、必ずズレが生じます。現実の職場は、世代ではなく「個人」で構成されています。
・飲み会が好きな人もいれば、嫌いな人もいる
・仕事中心の人もいれば、私生活重視の人もいる
したがって必要なのは、画一的なルールではなく、柔軟な選択肢の設計です。
4.「心理的安全性」を構造としてつくる
若手が意見を言えない組織では、摩擦は表面化せず蓄積します。
その結果、
・突然の離職
・無関心
・最低限の仕事しかしない状態
が生まれます。
これを防ぐには、上司の人格ではなく、仕組みとして意見が出る場を設計することが必要になります。
例えば、
・定期的な1on1
・匿名フィードバック
・若手参加型の改善会議
という選択肢があります。
5.「共通の論理」をつくる
上司側の論理だけでは、若手は納得しません。重要なのは、双方が理解できる共通言語を持つことです。
例えば、
・効率
・顧客価値
・リスク回避
といった軸で議論することで、世代を超えて合意形成が可能になります。
●実務的な一歩:すぐにできる施策
現場で実行しやすい形に落とすと、次の3点になります。
1.「このルールの目的は何か?」を毎回言語化する
2.若手に「不要だと思う慣習」を挙げてもらう
3.その場で「残す・変える・やめる」を議論する
これだけでも、組織の空気は大きく変わります。
●結論 問うべきは「正しさ」ではなく「意味」
これからの組織に必要なのは、「どちらが正しいか」という議論ではありません。必要なのは、その行動に意味があるのかという問いです。意味が共有されている組織では、世代間の違いは「対立」ではなく、多様性として機能するようになります。
出典
・日本経済新聞「NIKKEIプラス1」2026年2月28日「Z世代が選んだビジネス『10の謎習慣』」
・ニッセイ基礎研究所 レポート(世代間の認識ギャップに関する分析)
・電通若者研究部『若者離れ』