価値のジレンマ・・・No.113 地上波テレビの未来 ~今後地上波の民放テレビ局が取り得る選択肢~
生活者のテレビ離れは加速しており、このままのスタンスとポジションでは、地上波の民放テレビはやって行けなくなります。そこで必要な処方箋と選択肢としてはどんなことが想定できるでしょうか。
テレビが生き残る条件とは
1. ビジネスモデルが崩壊しつつある現状
前提として地上波民放テレビ局が踏まえるべきは、「視聴率低下」ではなく収益構造の崩壊です。
・8年間で民放キー局のCM売上は合計約1,476億円減少
・テレビ視聴者は4年で約300万人減少
・TVer広告収入はCMの1/10以下
となっています。
これは
・視聴者が減る
・広告価値が下がる
・代替収益が育たない
という三重苦に陥っていることがわかります。
加えて、Netflixに代表される有料動画配信サービスは、
・制作費は民放テレビの2~3倍
・世界市場で回収
・独占コンテンツ戦略
という「別次元の競争力」を持っています。
2. 今後の分岐点:考えられる3つのシナリオ
(1)衰退シナリオ(何も変えない場合)
最も現実的に起こり得るケースです。
・制作費削減 → コンテンツ品質低下
・視聴者離脱 → 広告価値低下
・さらに制作費削減
という負のスパイラルに入り、
・ローカル局の統廃合
・キー局の機能縮小
・制作会社化
が進む可能性があります。
(2)「補完メディア化」シナリオ(現実的な着地)
テレビは主役から降り、生活者接点の一部になる方向です。
役割は次のように変わります。
・ニュース・災害情報(リアルタイム性)
・スポーツ・ライブ(同時視聴価値)
・高齢層向けメディア
つまり、「暇な時間に観るもの」ではなく「必要なときに使うインフラ」へ変化します。これは新聞がたどった道に近い構造です。
(3)再成長シナリオ(戦略転換が成功した場合)
ここで最も重要な示唆としては、彼らが生き残る鍵は「放送局」という定義を捨てることです。
1. コンテンツ企業への転換
・放送ではなく「IP(知的財産)」で稼ぐ
・ドラマ・アニメを海外展開
・配信前提の制作
これは、韓国のコンテンツ産業モデルに近い方向です。
2. ハイブリッド広告モデル
従来のCMから脱却し、
・データ連動型広告
・EC連携
・インフルエンサー連携
へと進化する必要があります。
テレビは「マス広告」から「データメディア」に変わることになります。
3.「体験メディア」化
今後の生活者は、
・見る → 参加する
・視聴 → 体験
へと変化しています。
そのため、
・番組連動型イベント
・リアル施設(テーマパーク・展示)
・コミュニティ形成
など、「体験ビジネス」への拡張が不可欠です。
3. マーケティング視点での本質
地上波テレビの変化は、単なるメディア変化ではありません。これは、「生活者の時間の奪い合い」から「生活者の意味の奪い合い」への転換です。テレビはこれまで、暇を埋めるメディアでしたが、今後は意味を提供するメディアに変わらなければ選ばれません。
4. 生き残るテレビの条件
今後の民放テレビが生き残る条件は明確です。
●放送局という自己定義を捨てる
●コンテンツIP企業になる
●グローバル市場で戦う
●データと連動する
●体験価値を提供する
これができない場合、「緩やかな縮小産業」になる可能性が高くなります。