価値のジレンマ・・・No.114 人生のキャリアを「再設計」する
昇進が終わったからといって、その人の可能性が終わったわけではありません。むしろ、選択の自由が広がるタイミングと考えることができます。これまでの延長線でなく、新たな選択肢に目を向けると、仕事も人生もさらに豊かな時間を手にすることができます。
「収入の最大化」から「人生を充実させる時間の最大化」へ
ミドル以降のキャリアは、多くの人が「昇進の限界」に直面します。しかしこれはキャリアの終わりではなく、「ライフプランを再設計するタイミング」と捉えることができます。
これまでのキャリアは、組織の中で上に上がる(タテの成長)評価や報酬を高めるという構造でした。一方、人生の後半戦は、経験を広げ(ヨコの成長)、自分の納得感や充実度を高めるという視点が必要になります。これは「他者評価のキャリア」から「自己納得のキャリア」への転換を意味します。
キャリアを再設計する選択肢としては、次の4つの発想があります。
●選択肢① キャリアの“横展開”で成長する
例えば、「異業種への転職」「同職種でも未経験領域への挑戦(例えば給与・労務)」「社内での業務スイッチ」などを選ぶ人がいます。ここで重要なのは、「スキルの再利用」ではなく「スキルの再構築」です。
50代からは過去の経験を活かすことに固執すると、選択肢が狭くなります。その一方、未経験領域に踏み出すと、視野と機会が広がるという逆転現象が起きます。新しいことに挑戦すれば、人は再び成長実感を得られるという点に着目すれば、その人の可能性は広がります。
●選択肢② 報酬より“時間価値”で仕事を選ぶ
人生の後半戦で着目すべきは「家計構造の変化」です。教育費は減少し、住宅ローンがある方は終了していきます。また社会保険負担も変わります。このライフステージ変化は、これまでのように高収入を必要としなくなっていくことを意味します。
その結果、仕事選びの軸が変わります。これまでは年収・地位・安定性を重視しましたが、人生の後半戦では「学びがあるか」「面白いか」「自分の時間をどう使うか」という視点に変わります。これまでのように「収入の最大化」から「人生を充実させる時間の最大化」へとシフトできます。
●選択肢③ “構造的に伸びる領域”に目を向ける
今後のキャリアを考える上で、もう一つ重要なのは「産業構造の変化」です。現在、明確に起きているのは次の二極化です。それは生成AIで代替されやすい職種(特に事務・定型業務)VS 人手不足が深刻な現場系職種(介護・物流・運輸など)という構図です。
後者は、社会インフラとして不可欠であり、人材不足により賃金が上昇傾向にあります。「体力的に厳しい」という先入観で排除せず、「勤務時間を調整する」「パートタイムで関わる」といった柔軟な方法を選択すれば、ひとつの選択肢になります。
●選択肢④:複線型キャリア(パラレルキャリア)を持つ
人生の後半戦では、「一つの仕事に依存しない」という考え方も重要です。「本業+副業」「仕事+学び直し」「収入+社会貢献」といった選択肢が出てきます。この発想に立つと、リスク分散ができ、自己実現の幅が広がります。副業や資格取得は、「次のキャリアの準備」としても機能します。
●人生の後半戦は自由度と自分時間が最大化する
昇進が終わったからといって、その人の可能性が終わったわけではありません。むしろ選択の自由が広がるタイミングと考えることができます。自分で自分の可能性を選べる余地が増え、自分の意思でライフプランを設計できるというメリットがあります。
人生の後半戦は、「企業や組織から選ばれるキャリア」ではなく、「自分でキャリアを選ぶ」という転換期です。これまでの延長線でなく、新たな選択肢に目を向けることで、仕事も人生もさらに豊かにすることができます。
■参考
・『女性たちの定年後~お金・仕事・暮らしのリアル』(祥伝社新書)
・総務省「労働力調査(2024年)」
・リクルートワークス研究所 各種調査