価値のジレンマ・・・No.75 Z世代が解雇されたり、退職したりしている隠れた理由

2008年の金融危機に始まりパンデミックの混乱に至るまで、経営者が社員をどのように扱かってきたかをZ世代は冷静に見ていました。そしてキャリアを積んでいく重要な時期に、オフィスで同僚と顔を合わせて働く機会をパンデミックはZ世代から奪ってしまいました。その結果、人を通じて学ぶ機会が失われ、打ち合わせやプレゼン、緊密に連携を取る協業が当然の実社会で活躍する準備が、Z世代にはできていない可能性があります。
パンデミックの最中に社会に送り出されたZ世代は、経営者が社員をどのように扱かってきたかを冷静に見ていた
2008年の金融危機に始まりパンデミックの混乱に至るまで、経営者が社員をどのように扱かってきたかをZ世代は冷静に見ていました。そしてキャリアを積んでいく重要な時期に、オフィスで同僚と顔を合わせて働く機会をパンデミックはZ世代から奪ってしまいました。その結果、人を通じて学ぶ機会が失われ、打ち合わせやプレゼン、緊密に連携を取る協業が当然の実社会で活躍する準備が、Z世代にはできていない可能性があります。
アメリカのZ世代(1990年代半ばから2010年代前半に生まれた現在12歳〜28歳前後の若者たち)は、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの最中に社会に送り出されました。アメリカの雑誌Incの記事によると、雇用主の60%が2024年に採用したZ世代の従業員を解雇したことがあるとしています。またZ世代は仕事が続かない人が多いという指摘もあります。
2008年の金融危機に始まりパンデミックの混乱に至るまで、Z世代は経営者が社員をどのように扱かってきたかを冷静に見ていました。また解雇、減給、雇用の不安定さに、Z世代の親たちが翻弄されてきた事態も経験しています。こうした時代環境を考えれば、Z世代が従来のキャリアパスを懐疑的にとらえるのは理解できます。
Z世代は従業員や社会問題に配慮している企業を高く評価している一方、不安定な労働市場や従業員を冷遇した企業を見てきました。他の世代からZ世代がやる気がないように見えるのは自己防衛であり、頑張ってもそれほど安定が得られない環境に身を置くことへのためらいかもしれません。
Z世代が職場で問題になる要素のひとつがコミュニケーションです。この世代はネットやデジタル機器に囲まれた環境で育ってきた「デジタルネイティブ」です。SNSやテキストベースのやり取りの中で育ったため、この世代は対面による意思疎通や職場でのやり取りに苦労する可能性があります。
キャリアを積んでいく上で重要な時期に、オフィスで同僚と顔を合わせて働く機会をパンデミックは奪ってしまいました。その結果、学ぶ機会が失われ、打ち合わせやプレゼン、密に連携を取る協業があたりまえの組織に入る準備ができていない可能性があります。
Z世代が職場で「慣らしの機会と時間」がなかったために、職場に溶け込むことはすぐにはできません。こうしたコミュニケーションギャップは誤解やミスを招きやすく、Z世代が仕事熱心でないという印象を持たれてしまう可能性があるわけです。
彼らより年長の世代にとっての成功とは、勤勉に働き組織の中でキャリアを重ねていくことでした。ミレニアル世代は出世のために夜も週末も祝日も働くことがありました。しかしZ世代はそうした考えをよしとはしません。
デロイトの報告書では、Z世代の半数が就職を検討する際の最優先事項の1つに「ワークライフバランス」を挙げています。「本音をはっきり口にする」Z世代は、キャリアアップよりも、個人のウェルビーイングやメンタルヘルスを優先する傾向が強いようです。こうした優先順位の変化は、年長の同僚や、従業員に期待以上の成果を求める企業にとっては相容れないものかもしれません。Z世代は残業したり、勤務時間外でも常にEメールに対応したりすることを好まないからです。
Z世代が直面する職場の問題の多くは、彼らにすべての非があるわけではないかもしれません。Z世代は、雇用の安定やキャリアアップという約束が守られるとは限られず、必ず報いてくれるとはいえない企業で働くことが人生の全てではないことを悟っているのかもしれません。この傾向は日本でも同様に存在するように思えます。
出典:Z世代が解雇される3つの理由 「怠惰だから」ではない フォーブスJapan