価値のジレンマ・・・No.79 権力のある人は自分を抑制する力を失う傾向がある

高級車に乗る人の中には、他のドライバーのことを考えず、マナーの悪い運転をする人を時折見かけることがあります。なぜそういう人がいるのか。その理由を心理学者のダッチャー・ケルトナー教授が解き明かしてくれました。
権威の象徴が高級車だという考えは、とても貧しい人の発想だ
カリフォルニア大学バークリー校の心理学教授ダッチャー・ケルトナーさんは、自転車で職場に向かっている時、黒いメルセデス・ベンツにはねられそうになったそうです。
人を危ない目に遭わせる相手が、オンボロの自動車ではなく、高級車が多いように思えるのはなぜなのかと考えました。事故を起こせば失うものが多いのに、高価な自動車を運転する人はなぜ危険な運転になるのか不思議でした。そこで彼はある仮説を検証することにしました。
ひとりの研究者には交通量の多いバークリーの道路沿いで、近づいてくる自動車のメーカーとモデルを書き留めてもらい、もうひとりの研究者には自動車が接近してきたら横断歩道を歩いてもらうことにしました。その結果は、「安価な自動車では、横断歩道を走り抜ける割合はゼロ%でした」が「高級車の場合は、46.2%が横断歩道を走り抜けました」という内容でした。
ケルトナー教授の研究では、権力のある人は、自分を抑制する力を失う傾向にあるというのが、この検証の結論でした。権力があるという感覚を強く持つ人は、他者にどう思われるかはあまり気にしなくなり、他者の心を上手く読めなくなるとのことでした。他者に共感する必要性を、あまり感じなくなるからだそうです。
ケルトナー教授は、「より大きな権力を享受する人々は、衝動的に食べたり、性的な関係を持ったり、交通規則を破ったり、ウソをついたり、騙したり、万引きをしたり、子どもからキャンディを取り上げたり、失礼で・下品で・無作法な口を利いたりする可能性が高い」とも指摘しています。
日本でも高級車に乗る人の中には、他のドライバーのことを考えず、マナーの悪い運転をする人を見かけることがあります。その度に、クルマのブランドに見合った良識ある運転をしないと、クルマのイメージが低下し、クルマが気の毒だと感じていました。権威の象徴が高級車だという考えは、とても貧しい人の発想だと思います・・
参考資料:「高級車に乗る人」が危険な運転をしがちな理由 権力のある人は自分を抑制する力を失いがち 東洋経済オンライン