価値のジレンマ・・・No.81 アメリカでこそ価値がある、全米一トイレが綺麗なことを売り物にする商業施設

アメリカで注目されているGSを併設した巨大なコンビニエンスストアに、私は注目しています。その理由は、全米一トイレが綺麗なことを売り物にしているからです。アメリカを訪れて、ホテルなど一部を除いて、SCなどのトイレの汚さに閉口したことがある日本人なら、この意味は痛いほど理解できるはずです。
“全米で最も清潔なトイレ”として評価された巨大なコンビニエンスストアBuc-ee’s(バッキーズ)
アメリカの南部テキサス州を中心に巨大なコンビニエンスストアを運営するBuc-ee’s(バッキーズ)という企業があります。2024年6月現在、バッキーズはアメリカ国内で50店舗を展開し、そのうち36店舗はテキサスにあります。他の店舗はフロリダ・アラバマ・ジョージア・テネシー・サウスカロライナなど基本的には南部の州がほとんどです。今後はバージニア・ノースカロライナ・ミシシッピ・アリゾナなどに出店を計画しており、全米への拡大を視野に入れているようです。バッキーズの創業は1982年。創業者はオーナーのArch Aplin(アーチ・アプリン)さんで、店の名前はアプリンさんの子どものころのニックネーム“Bucky Beaver”に由来し、ロゴにもビーバーが使用されています。
バッキーズはガソリンスタンド(以下GS)と店舗は共に365日24時間営業で、GSの給油スペースは広く、給油レーンが20以上並ぶ店舗もあります。このGSではガソリンはもとより、ディーゼルエキゾーストフルード※、エタノールフリー燃料(エタノールを含まずボートや小型エンジンに向いています)やEV充電も可能です。また大型の洗車ゾーンを備えた店舗もあります。
コンビニエンスストアは非常に広く、テキサス州の「New Braunfels(ニューブローンフェルズ)店」は世界一大きいコンビニエンスストアという記録を持っています。品揃えは、食べ物からアウトドアグッズ、服からインテリアグッズまで揃っています。バッキーズの店舗に足を踏み入れると、ホームセンターのような広々とした店内に圧倒されます。
特筆すべきは、バッキーズは綺麗なトイレにこだわり、過去に“全米で最も清潔なトイレ”として受賞もしています。アメリカに行ったことのある日本人なら、アメリカの駅やSCを始めとするトイレの汚さには閉口したはずで、この企業がトイレの綺麗なことにこだわり、売り物にしている意味は痛いほどわかるはずです。従来ガソリンスタンドとは給油やトイレ休憩のため仕方なく立ち寄るところでしたが、バッキーズなら「きれいで広々としたトイレ」「多彩な食品やグッズ類」「並ぶ必要のないガソリン」という価値づくりによって、立ち寄りたくなる存在に変えています。
※ディーゼル エキゾースト フルード(DEF)とは、非毒性、無色、無臭、不燃性の液体です。 これは車の専用タンクに保管されており、排気システムに注入して排気ガスを清浄します。
全景画像はmAmericaより転載