イタリアでは人口の60%が実質的に税金を納めておらず、国家財政を支えているのはわずか17%の中間層と企業に過ぎないことを知り、驚がくしました。そのため「まじめに納税する者が損をする」構造が蔓延しています。脱税を除いたイタリアの社会構造は、日本にも共通点があることに気づきます。
私たち一人ひとりの理解と行動にかかる「民主主義の持続可能性」
イタリアでは、人口の60%が実質的に税金を納めておらず、国家財政を支えているのはわずか17%の中間層と企業に過ぎません。医療・教育・社会保障といった公共サービスの維持費は年々膨らみ、その負担は一部の納税者に集中しています。一方で、脱税やインフォーマル経済が広がり、「まじめに納税する者が損をする」構造が蔓延しています。
ではイタリアの政治はどう対応しているでしょうか。答えは「減税」や「無料サービス」の約束です。ポピュリズムと人気取りのバラマキ政策は、国民に“権利だけを強調し、義務を忘れさせる”構図を生み出し、社会の分断と制度の疲弊を加速させています。
問題の根源には「教育の欠如」もあるようです。経済や税、社会保障の仕組みに関する理解が乏しいまま、国民は非現実的な政治メッセージを受け入れ、「無料でサービスを充実させ、税金は下げる」という幻想が繰り返されています。
イタリアでは、貧困対策の支出は過去15年で倍増しましたが、貧困層も倍増。ギャンブル支出は国の医療費を超え、消費の実態と「貧困」の定義にもずれが生じています。
脱税を除いて、イタリアの社会構造は、日本と似ている点があります。高齢化による社会保障の膨張、現役世代への過度な負担、正規・非正規雇用の二極化構造、政治の短期主義、そして教育の課題など、共通点が多いように見えます。
いま必要なのは、事実を共有し、将来を見据えた制度設計を行うことです。政治家、メディア、生活者がそれぞれの責任を果たし、持続可能な社会を築くための土台を整える必要があると思います。事実に向き合い、教育、制度、政治のリセットを始める時は今かもしれません。納税と社会保障の「公平な再設計」がなければ、制度はやがて限界を迎えるからです。
「民主主義の持続可能性」は、私たち一人ひとりの理解と行動にかかっています。イタリアの教訓は、日本にとっても有益な視座です。
参考:イタリアの人口の60%が税金を納めていない驚愕事実 Newsweek日本版