コラム

価値のジレンマ・・・No.92「60%の国民が納税していない国」

掲載URL:https://www.linkedin.com/pulse/%E4%BE%A1%E5%80%A4%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9Eno9260%E3%81%AE%E5%9B%BD%E6%B0%91%E3%81%8C%E7%B4%8D%E7%A8%8E%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%84%E5%9B%BD%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%81%AE%E5%8D%B1%E6%A9%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8B%E6%B0%91%E4%B8%BB%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%A8%E6%8C%81%E7%B6%9A%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7%E3%81%AE%E9%99%90%E7%95%8C-%E9%85%92%E4%BA%95%E5%85%89%E9%9B%84-ivtzc/?trackingId=%2B4HsTezpXKK%2F2KmZm16sZQ%3D%3D

コラム リンクトイン

イタリアでは人口の60%が実質的に税金を納めておらず、国家財政を支えているのはわずか17%の中間層と企業に過ぎないことを知り、驚がくしました。そのため「まじめに納税する者が損をする」構造が蔓延しています。脱税を除いたイタリアの社会構造は、日本にも共通点があることに気づきます。

私たち一人ひとりの理解と行動にかかる「民主主義の持続可能性」

イタリアでは、人口の60%が実質的に税金を納めておらず、国家財政を支えているのはわずか17%の中間層と企業に過ぎません。医療・教育・社会保障といった公共サービスの維持費は年々膨らみ、その負担は一部の納税者に集中しています。一方で、脱税やインフォーマル経済が広がり、「まじめに納税する者が損をする」構造が蔓延しています。

ではイタリアの政治はどう対応しているでしょうか。答えは「減税」や「無料サービス」の約束です。ポピュリズムと人気取りのバラマキ政策は、国民に“権利だけを強調し、義務を忘れさせる”構図を生み出し、社会の分断と制度の疲弊を加速させています。

問題の根源には「教育の欠如」もあるようです。経済や税、社会保障の仕組みに関する理解が乏しいまま、国民は非現実的な政治メッセージを受け入れ、「無料でサービスを充実させ、税金は下げる」という幻想が繰り返されています。

イタリアでは、貧困対策の支出は過去15年で倍増しましたが、貧困層も倍増。ギャンブル支出は国の医療費を超え、消費の実態と「貧困」の定義にもずれが生じています。

脱税を除いて、イタリアの社会構造は、日本と似ている点があります。高齢化による社会保障の膨張、現役世代への過度な負担、正規・非正規雇用の二極化構造、政治の短期主義、そして教育の課題など、共通点が多いように見えます。

いま必要なのは、事実を共有し、将来を見据えた制度設計を行うことです。政治家、メディア、生活者がそれぞれの責任を果たし、持続可能な社会を築くための土台を整える必要があると思います。事実に向き合い、教育、制度、政治のリセットを始める時は今かもしれません。納税と社会保障の「公平な再設計」がなければ、制度はやがて限界を迎えるからです。

「民主主義の持続可能性」は、私たち一人ひとりの理解と行動にかかっています。イタリアの教訓は、日本にとっても有益な視座です。

参考:イタリアの人口の60%が税金を納めていない驚愕事実 Newsweek日本版