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「コロナと共に消えていく」絶望的な会社を見抜く6つのチェックリスト ~年収や知名度で選んではいけない~

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コラム プレジデントオンライン

今回のパンデミックによって、10年は掛る社会の変化が、わずか1年足らずでやって来てしまいました。これだけ変化が早い中、20年~30年後に確実に生き残り、活躍する企業を特定することは難しくなっています。では何を拠りどころにして企業を選べばよいのでしょうか?

コロナ禍だからこそ、企業の真価が見えてくる

平均寿命が延びて100年時代といわれる中で、私たちの働く期間は長期化しています。かつてのように定年退職後に年金だけで暮らすのではなく、健康である限り社会と接点を持ち続けながら、働くことが一般化してきています。その一方コロナ禍にあって、10年は掛る社会の変化が、わずか1年足らずでやってきてしまい、デジタルトランスフォーメーション(DX)の対応も企業によって格差が生まれているのが現状です。

これだけ変化が早い中にあって、20年~30年後に確実に生き残り、活躍する企業を特定することは難しくなっています。安定だけを考えて公務員を望む就活生が増えていますが、公務員の終身雇用は10~15年後、すなわち2030年から2035年をめどに崩壊していくという指摘もあります(後述)。

これから就職や転職を考えている人に、ぜひチェックして欲しい企業の条件を洗い出してみます。

①大学生の人気企業就職ランキングに惑わされていないか

大学生に人気の高い企業を見ると、マスメディアの露出度が高く、現在好調だと言われる大企業や官公庁が上位を占めています。現在の業績が好調であるほど、20~30年後には成長の伸びしろが少なくなる可能性が高くなることに気づいていないようです。社会構造が変わる中で、今後いかに時代適応性を備えているいるかも加味されていません。

その証拠に、かつて大学生の人気企業ランキングに選ばれている業界や企業が現在どうなっているかをみれば理由がわかります。ちなみに1991年時点の大学生の人気企業ランキングを調べると、企業の盛衰が鮮明に見て取れます。当時ベスト10入りしていたのは、交通インフラ系の航空会社や鉄道会社、観光業界では旅行代理店、金融業界では都市銀行の名前が挙がっています。当時就活生から人気があった企業に共通するのは、「社会基盤になる仕事」「寡占市場にいる企業」「需要が景気に左右されず安定している企業」といった点でした。

こうした業界に当時めでたく入社していても、現在はどうなっているでしょう。企業を選ぶ際には、今が絶好調という尺度だけでなく、これから成長し飛躍する業界と企業に着目することが必要です。

まだ世に出ていない新たなビジネスモデルを開発し、創業から2~3年程度のスタートアップ企業や、企業の評価額(時価総額)が10億ドルを下らず創業10年以内のテック系ユニコーン企業(上場前のGoogleやTwitter、Facebookなども該当していました)で才能ある人たちと共に仕事をして、その成果を獲得するという発想があっても良いと思います。

②「安定を望む」人間ばかりが集まっていないか

不安が膨らむ世の中になると、若者でありながら「安定している企業」「永続できる企業」「安定している職種」を望む人が増えてきます。残念ですが、もはやそうした条件を備える企業や組織など存在していません。

2期目を務める奈良県生駒市長の小紫雅史氏は、公務員の終身雇用は10~15年後、すなわち2030年から2035年をめどに崩壊していくとし、以下の3点をその理由に挙げています。

・多くの公務員を雇用し続けることができない財政状況になる人口減少や高齢化、行政課題の多様化などに伴い、自治体の財政状況は厳しくなり、多くの公務員を雇用し続けることができない財政状況になる。

・AIやICTの普及と外部委託の増加によって、職員が従事する業務が大きく減少する定型業務をAIが行うようになれば、適正な職員数が今とは大きく変わり、10年もすると相当の自治体業務はAIやICTによる対応が可能になる。

・急激な社会変化や市民ニーズの高度化・多様化等に対応するには、プロジェクトごとに外部から専門家を登用するほうが合理的になる

職員採用に社会人経験枠を設けて年齢制限を撤廃するなど、多様な人材を求める動きはすでに自治体で始まっている。年齢に関係なく地域に付加価値をもたらすことのできる職員を抜擢し、中途採用者などの多様な視点を組織に持ち込んで、過度な同質性をあえて乱しにいくことが不可欠になる。

さらに小紫氏はこれから公務員になる人材は、

「終身雇用が崩壊しても、役所が手離さない公務員となること」
「公務員をやめても、食べていける公務員になること」

だと指摘しています。

この指摘は公務員だけでなく、すべてのビジネスパーソンに共通する内容だと思います。

参考文献:『デジタル時代のマーケティング・エクササイズ』(プレジデント社)

③「主体的に考えて行動」させる企業か

先輩や前任者がこなしてきたままに、過去の延長線上で仕事をさせ、仕事をする意図や目的、社会的使命、新たな収益方法や課金方法などについて、働く人に考えさせる機会を提供しない企業は要注意です。

もっと効果的な別の取組み方法はないだろうか」
「無料で提供されている現在のサービスを有料にしたら、収益性が高くなるはずだ」
「この作業は人間でなくロボットに代替させ、人はもっと創造的な業務に就くことができるのではないのか」
「分厚い紙のマニュアルを止めて、反復して視聴できる動画に変更できないか」

こうした問題意識を持って仕事に取組む人が多い組織なら、ダイナミックに業務を進めていくことができ、社員の商才も高度化します。言われたままに、決められたとおりにタスクを遂行する作業を社員にさせ、考えなくなる人材ばかりの組織になると、やがてその企業は存在価値を失う可能性があります。

④「先人たちが築き上げたブランド力」に依存していないか

その名を口にすれば、誰もが知っている企業に惹かれる人は多いものです。企業のブランド価値が、自分の価値とオーバーラップして判断してもらえる機会が増えるため、知名度の高い企業に入社したい心情はわかります。

ブランド価値が高い企業とは、先人たちが試行錯誤しながら仕事に取組み、成し遂げた結果です。ブランド価値に見合い、さらにその価値を高めようという意欲のある人材が新たに増えるのなら良いのですが、実態はそうならないことが多くなります。出来上がった企業のブランド価値に依存するだけで、自らの手で新たな価値を創造しようと思わない人材が増えていくと、現状に安住し、新たなビジネスモデルやイノベーションに取り組む人が減っていきます。

創造性が失われ、時代の変化への対応力に欠けると、組織は硬直化し企業の衰退が始まります。ブランド力の高い企業が知らぬ間に問題を抱える、まさにブランドのジレンマです。

⑤ITやAIの活用、リモートワークに積極的か

ITやAIを積極的に活用する企業風土になっているかどうかをチェックします。メールやビジネスチャットなどを活用せず、仕事の仕組みと取組みが20世紀のままに行われていないでしょうか。FAXや電話を主たるコミュニケーションツールとして使用している企業や組織では、先々が心配です。またリモートワークが可能な職種や業務があるにもかかわらず、リモートワークを取り入れていない企業や組織も、柔軟性と時代対応力に欠ける可能性があります。

企業がITやAIを活用できない最大の要因、それは経営者と幹部、管理職層がITリテラシーに乏しく、自身で新たな技術を使い慣れていないためです。ITリテラシーに疎い人たちは同類の人たち同士で集まる傾向が強く、狭いコミュニティの中で自分だけがITに疎いとは認識できない傾向があります。

⑥社会で活躍する人材が輩出されているか

その企業から有能な人材が社会に輩出されているかどうかを調べてみます。企業内で活躍している人はもとより、転職や起業によって活躍している人を輩出している企業は、創造性に溢れる有能な人材が数多く存在している可能性があります。

最近「アルムナイ」という言葉を耳にするようになりました。「卒業生、同窓生、校友」の意味です。外資系企業の中には自社を退職したアルムナイを人的資源として位置付け、彼らを活用しているところがあります。外資系コンサルティングファームのアクセンチュアは、OB・OGを集めて「アルムナイパーティー」を毎年開催しています。元社員が集まり、アクセンチュアのトップや社員と共に交流を図っています。OBやOGといっても定年退職者ではなく、参加するのはキャリアチェンジを果たした20~40代の現役ビジネスパーソンが中心です。

人材の流動化が一般化している欧米社会では、アルムナイが多様な転職先で活躍することで、前職の企業価値が向上する傾向があります。また退職した人材の中には、会社側からは「辞めてほしくなかった」人材が存在し、退職者側からは「元の会社に戻りたい」と考え、復職するケースがよくあります。

参考資料:日本の人事部